上限の定義とちょっとした系
実数全体の集合ℝの部分集合Aに対して
U(A):={x∈ℝ|∀a∈A, a ≤ x}とし、
supA:=minU(A)と定める。supAをAの上限と呼ぶ。
ここで特にx∉U(A) ⇔ ∃a∈A, x<aであることに注意する。自然言語で言うと、「Aのどんな元aに対してもa ≤ x」の否定は「Aの元aで、x<aとなるものがある」だということ。
ちなみにmax,minの定義を確認しておくと
α=maxA ⇔ α∈Aかつ∀x∈A, x ≤ α
α=minA ⇔ α∈Aかつ∀x∈A, α ≤ x
[主張]
α=supAであることはαが次の(s1),(s2)を共に満たすことと同値である。
(s1)∀x∈A, x ≤ α
(s2)∀ε>0, ∃x∈A, α-ε<x
[証明]
まずα=supAと仮定する。上限の定義よりα∈U(A)であり、U(A)の定義から(s1)が成立する。また、正の実数εを任意にとるとα=minU(A)よりα-ε∉U(A)。上に書いた注意より、∃x∈A, α-ε<x。よって(s2)も成り立つ。
次に(s1),(s2)を仮定する。(s1)よりα∈U(A)。ここで∀x(x∈U(A) ⇒ α ≤ x)の対偶である∀x(x<α ⇒ x∉U(A))を示す。x<αなるxを任意にとる。α-x>0より(s2)から∃y∈A, α-(α-x)<y、すなわち∃y∈A, x<y。上に書いた注意よりx∉U(A)。よってα∈U(A)かつ∀x(x∈U(A) ⇒ α ≤ x)が言えたので、α=minU(A)=supA。▯
一定の条件下で上限は最大元に一致する。
[系1]
[証明]
定義よりmaxA∈U(A)。U(A)の元xを任意にとると、maxA∈AよりmaxA ≤ x。以上よりmaxA=minU(A)=supA。▯
[別証]
maxAを(s1),(s2)のαに当てはめたときに(s1),(s2)が成り立つことを言えばよい。(s1)はmaxの定義より成り立つ。(s2)は任意のε>0に対しx=maxA∈Aとすれば成り立つ。▯
[系2]
supA∈A ⇒ supA=maxA
[証明]
※この証明は間違いです。正しい証明は1番目(一番上)のコメントをご参照ください。
supA∈U(A)よりmaxA ≤ supA。また仮定よりsupA∈AなのでsupA ≤ maxA。▯
2016/10/24 「どんなAの元aに対しても」を「Aのどんな元aに対しても」に修正